軍師の最期



紙に 名を書いていく
雍州からの撤退の順序である
自分はもうすぐ死ぬから こういうことをしているのだ と私は思った
死を前にしての 動揺はない 恐怖もない
楽になるとさえ 思わなかった
ほかに 書き残すべきことは なにもなかった
そういうものだろう 立ち上がった
死ぬ という思いは 消えない
自分の生涯を 振り返ろうとは思わなかった 人は生き 人は死ぬ それだけのことだ
ゆっくりと 歩いた 部屋の中だ
闇が 近づいてくる その闇に 私はかすかな 懐かしさのようなものを感じた
闇が さらに歩み寄ってくる。

自分が 笑ったのがわかった