藍色の華



ずっと、ずっと、探していた
私だけの藍色の華を
私以外の子はどんどん自分だけの華を見つけて飛び立って行く
最初は皆、自分だけの華を見つけられずにいた
だけど、どんどん自分だけの華を見つけていって私だけが取り残された
私は皆が飛び立って行くのを見送る事しか出来なくて
一人、地上に取り残された
私は一人、藍色の華を探していた

一人、藍色の華を探しているとアイリスの花が私に語りかけてきた
「こんにちは」
「こんにちは」
「何を探しているの?」
「藍色の華を探しているのよ」
「藍色の華?それなら私の事じゃないかしら?」
そうアイリスの花は言った
だけど、私は頭を振った
「いいえ、違うわ……私が探している華はあなたではないわ」
「どうして?」
「だって、私はあなたのように変わりやすくはないもの」
そう私は言って歩き出した

そして少し歩いた所で今度は朝顔の花に声を掛けられた
「こんにちは」
「こんにちは」
「何を探しているんだい?」
そう朝顔の花が聞いてきたので、私は答えた
「藍色の華を探しているのよ」
「それって、ボクの事かもしれないね」
そう朝顔の花は言った
だけど、私は頭を振った
「いいえ、違うわ……私が探している華はあなたではないわ」
「どうしてだい?」
「だって、私はあなたのように儚い恋はしてないもの」
そう言って私は歩き出した

少し歩いた所でオシロイバナに声を掛けられた
「こんにちはお嬢さん」
「こんにちは」
「何をお探しで?」
そうオシロイバナが聞いてきたので、私は答えた
「藍色の華を探しているのよ」
「それは儂の事かもしれんのう」
そうオシロイバナは言った
だけど、私は頭を振った
「いいえ、違うわ……私が探している華はあなたではないわ」
「どうしてその事が判るんじゃ?」
「だって、私はあなたのように憶病じゃないもの」
そう言って私はまた歩き出した

どのくらい歩いただろう
そう思っているとカキツバタの花が私に語りかけてきた
「こんにちは美しいお嬢さん」
「こんにちは」
「何をお探しになっているの?」
そうカキツバタの花が聞いてきたので、私は答えた
「藍色の華を探しているのよ」
「それなら、私の事じゃないかしら?」
そう自信ありげにカキツバタの花が言った
だけど、私は頭を振った
「いいえ、違うわ……私が探している華はあなたではないわ」
「あら、どうしてそんな事が判るの?」
「だって、私はあなたのように幸運が必ず来るなんて思ってはいないもの」
そう言って私は再び歩き出した

どれくらい藍色の華を探しただろう
私が探している藍色の華はどこにも見つからなくて
無性に悲しくなって
泣きそうになった時、ヒアシンスの花が語りかけてきた
「どうして、泣いているの?」
「……私だけの藍色の華を探しているの」
「……見つかったの?」
「いいえ、どこにも見つからなかったわ」
私は弱々しく頭を振って答えた。
そう、答えるとヒアシンスの花が言った
「君が探している華はきっとここにはないのかもしれないね」
「どうして?」
私は不思議そうな表情でヒアシンスの花を見つめた
ヒアシンスの花は微笑みながらこう言った
「だって、君の心はとても悲哀に満ちているよ」
その言葉に私はポロポロ涙を流した
あぁ……私が探している藍色の華はどこにもないんだと気づかされて
悲しくて泣いた
そんな私にヒアシンスの花が言った
「君が探している藍色の華はここにはないけど、僕じゃダメかな?」
そう言って差し出されたのは紫藍色のヒアシンスだった
「有難う……とても嬉しい」
私はそれを受け取り、ヒアシンスの花に微笑みかけた
その時、私は気づいた
私が探していた華はこのヒアシンスだと言う事に
「これで……君は飛び立つ事が出来るね」
そうヒアシンスの花は言うと私の前から消えてしまった
そして私は皆が待つ空へと飛び立つ事が出来た