→マーキングfrom…



サガの部屋で一人、カノンは散らばった服もそのままにただ座っていた。
「片付けなければ、な…」
もうすぐサガが帰ってくる。
こんな惨状を見られる訳にはいかない。
彼が帰ったのは何時ごろだったか…。
カノンはのろのろと立ち上がると乱雑に放り投げられた服を拾い上げ、それをそのまま身につけると部屋を片付け、自室へと戻った。


少し眠ってしまったらしい。
目を覚ましたカノンは散々声をあげ、乾いてしまった喉を潤そうと台所へと向かう。
と、玄関のドアが開く音がした。

「…おかえり、サガ」
自分でも驚く程にか細い声で、そちらを見もせずにそれだけ言うとそのまま自身の目的を果たすべく歩を進める。
「カノン、どうかしたのか…?」
「……何でもない、少し長く寝てしまっただけだ」
コップの水を飲み干し、空になったそれをもう一度満たす。

「カノン」
今の答えはサガのお気に召さなかったらしく、再び名前を呼ばれる。
「何でもないと言っているだろう」
半分ほど水を飲み、それをそのままにサガの脇を通り過ぎる。


サガの顔は見れない。


「カノン!」
突如肩を掴まれると、無理矢理に身体を反転させられ、否が応にもサガと向き合う形になる。
「…! …サガ、放せ。痛い」


サガの顔は、見れない。


「ダメだ。カノン、私を見ろ」
「………」
「………」


サガの、顔は……。



どれだけそうしていただろう。
5分?
10分?
すごく長い間だったかもしれない。
ほんの数秒だったかもしれない。
サガはカノンを、カノンは床を凝視したまま動かない。
…と、突然にサガは気付いてしまった。
カノンの首筋にはっきりと、まるで見てくれと言わんばかりの赤いそれの存在に。
つい、とサガは指で触れてみる。
カノンは一瞬戸惑いを見せるが、それはすぐにしまったというものに変わり、サガの腕から逃れようと身体を捩るが、更に力がかかるだけだった。
「…っ放せ!」
噛みつかんばかりの勢いでサガを睨みつけるが、その手が怯むことはない。
「…カノン、それはどうしたのだ?」
やっとの思いでしぼり出したその声は今にも消えそうで。

「お前には関係な―――っ!!」
カノンが言い終わらない内に、サガは赤く残るそれに噛みついた。
「っ痛…、サガ!…んぅ…」
強く吸われ、舐めあげられて痛みとは違う感覚がカノンの身体を走る。

「………だ…」
「サガ…?」
そのままサガはカノンの蒼い髪に顔を埋めるように、カノンを抱きすくめる。
「私の物だ…。誰にも、渡さない…」

カノンは今度は抗わなかった。
首を、頬をかすめていく碧い髪を優しく撫でつける。




「当たり前だ」





――――お前以外になど、触らせはしない。














後書きと言う名の言い訳。
何だこの双子Σ(゜Д゜;≡;゜ω゜)!?
すいません、最初のヤり捨てられたカノンと、最後の一文が書きたいがために頑張りました←
激甘な黒い兄さんも好きだけどやはり双子座はこーでないtげふんげふん
結局のところ両想いなんだか何なんだかわかりませんorz