風色鎮魂歌 2



俺はベンチに横になると雑誌を開いた状態で顔に乗せて一眠りすることにした。
(…なかなか居心地いいんだよな…)
うつらうつら…。俺が眠りにつくかつかないか…。
ふと嫌な気配を感じを覚え雑誌を顔からどけ上半身を起こした。裏庭の向こう側は、柵がありそのまた向こうには一般人の通る通りがある。ぼんやりとその通りに目をやった。別に何の変哲も無いように見える暖かで穏やかな陽だまりを受ける道だった。

…なんだ?この悪寒のような…肌に冷たく刺す風は…。
疲れているのかなと再び横になろうとしたとき、小さな少女がその道を横切った。髪は栗毛で二つに束ねられており、母親の姿は見当たらない。どうやら迷子のようだが…。
俺には関係ないとたかをくくって少女を遠くから眺めた。少女は俺に気づいた様子もなく目に涙を溜めて母親の姿を目で探していた。
「…ママぁ」
小さく淋しげに呟く声が遠くにいる俺の場所まで聞こえた気がした。
(…っち)
しかたがないな…と俺は身を起こす。少女は車道を横切ろうとする。
(バ、そんなとこ歩くんじゃね―)

キキィ!!!
……ドンっっ!
…ソレは一瞬の出来事で―。突っ込んできた車が少女を跳ね飛ばす…。少女は宙を舞い…地上へと…

ドサっ

落ちた。
「…………」
  
ズキン

…腕が疼く。俺もあんな風に腕が使えなくなったとき飛ばされたのだろうか…?