23:00


普段と何ら変わらない一日を過ごしていた。
いつもと同じ時間に起き、いつもと変わらず職務を終え、まっすぐに自身の居住スペースでもある宝瓶宮へと帰る。
そして、何事もなく今日も終えようとしていた。
が、不意に良く知った小宇宙を、極近くに感じた。
「………」
カミュはため息を一つ吐くと、それが感じられた方、入り口へと向かうと扉を勢い良く押し開いた。

「のわぁぁ!?」

危うく扉にぶつかりそうになったミロは、しかし気にする様子もなく「カミュ!」と彼特有の人なつっこい笑顔を見せる。
カミュは再び息を吐いた。
それが白くなっているのを見て初めて、今晩はやけに冷え込んでいることを知る。
自分はともかくミロは寒いだろうと思ったカミュは、その様子からさして重大な用件ではないだろうと踏んで、とりあえずミロを中へと招き入れた。





23:10


「で、どうかしたのか?」
勝手にソファを陣取り、クッションを抱きかかえているミロの前に湯気の上がるティーカップを差し出してやる。
ミロはカップを受け取ると、すぐには飲まずに手で包み込んだ。
「ぇーっと…、そのぅ……ぁ、カミュは元気かなーって思、って…」
カミュの顔が僅かに険しくなるのを見て、ミロの語尾が弱くなる。
「ぇっと、ぇっと…。カミュ…?」
しばらく見合っていたが、やがてカミュが呆れたように破顔する。
それを見てミロにも笑顔が戻った。





23:40


「んでー、あん時サガがぁ」
「あれは確実にお前が悪い」
「ぇー、何だよー!」
二人共通の昔話を肴にミロの持参した酒を飲み交わす。
けらけらと笑うミロに対し、カミュは静かに微笑む。

話が一段落し、グラスを傾けたミロは不意に窓の外へと目がいった。
「カミュ、カミュ!外!」
「……?」
言われるがままに窓の方へ目を向けると、ガラスの向こう、黒を背景に白い粉が思い思いに舞っていた。
「……雪か…」
「…て、カミュは見飽きてるかな…?」
「そんなことはない」
雨は降れども滅多に雪など降ることのないこの地で、ミロと見る雪はまた違って見えた。

二人はもう一度、笑い合った。





23:55


ミロがしきりに時間を気にする。
先程からもう何度も時計を見上げては、そわそわと落ち着かない。

「…ミロ?」
「ぇ?!ぁ、ううん!飲んで飲んで!!」
「ぁ、あぁ…」
瓶の底に僅か残る清んだ液体がカミュのグラスに注がれた。





23:59


「ね、カミュ。外出ない?」
「…?別に構わないが…」
カミュが言い終わらない内にミロは飛び出して行った。
そんな姿に苦笑しつつも、カミュはまるで子犬のようにはしゃぐミロを追って粉雪の舞う中へと足を踏み出す。
一頻り走り回ったミロは先程の提案と同じくらい唐突に立ち止まると、ふっと空を見上げ、「積もったら良いなぁ」と呟く。
そしてくるりとUターンして宮の入口に立つカミュの元へ戻り、


「誕生日おめでとう、カミュ」


「………。ぁ、あぁ…。そうか…、ありがとうミロ」
何のことか把握し切れなかったカミュは数秒の間を置いて返事をする。
ミロはその数秒の間に、もしや間違っていたのか、いや一ヶ月前から数えていたし、サガにもシュラにも確認したのだから間違ってはいないはず…でももしかして…!?
と一人で百面相をしていたが、それもさっと笑顔に変わる。

「カミューーー!!」
「!!?」
ぎゅう、と抱きついてくるミロの柔らかな髪を撫でながら、カミュは目を閉じた。










After…


「寒い…」
「………」
「ぁ、今バカにしただろー」
「していない。…ほら」
「わーい毛布ー!」
「…………」













後書きと言う名の言い訳。
ギリギリ間に合った感がいっぱいですが・・、
カミュ先生お誕生日おめでとーーーヾ(´∀`)ノ
でまぁ、何かアレですよね。
カミュ誕のはずがどっちかって言うとミロの方がでばってます。
まぁ仕様というコトで←